所得税の確定申告を行うにあたり、検討しなければならないことは山ほどある。
「必要経費になるか否か」「報酬か給与か」に引き続き、今回は「事業所得か雑所得か」を考えてみたい。
両所得とも、所得の計算方法は「収入から必要経費を差し引く」という手法をとるという意味で同じである。
ただし、大きな違いとして、その計算の結果マイナスが出た場合、事業所得が他の所得と通算できるのに対し、雑所得は他の雑所得内でしか通算できない。
わかりやすく言えば、事業所得のほかに給与所得がある者で、仮に事業所得がマイナスであれば給与所得と通算できるので、確定申告により給与所得から源泉徴収されていた税金が還付される。
これが雑所得であったなら他の所得とは通算不可のため税還付を受けることはできない。
ただし、年金受給者で年金から源泉徴収を受けている者においては、年金が雑所得になるため、雑所得のマイナスが通算され税還付を受けることができるのだが。
法律上、事業所得はどのように定義されているのだろう。
まず所得税法第27条において「事業所得とは~(一部省略)~政令で定めるものから生ずる所得をいう」とされ、次に同法施行令(政令)では11もの例を掲げたうえで、12番目に「前各号に掲げるもののほか対価を得て継続的に行う事業」とし、対価性と継続性を要求する。
また、同法基本通達35‐2の注意書きにおいて「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」とされ、なお書きとして「その所得にかかる取引を記録した帳簿書類の保存が無い場合(その所得にかかる収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務にかかる雑所得(~一部省略~)に該当することに留意する。」としている。
ここに、300万円という具体的な数値が出ているが、これは過去の判例における判決文にある「営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、精神的肉体的労力の程度、人的物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴、社会的地位、生活状況」といったポイントに、「その活動によって相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性があるか否か」、すなわち「メシが食えるか」といったところでの一つの基準を設けたのではないかと考える。
また、事業所得か雑所得かの判断基準として「記帳・帳簿書類の保存」を設けているのは、「自己の危険と計算における企画遂行性の有無」の判断基準としているように思える。
結論として、事業所得としたいなら、まずは記帳し帳簿書類を保存しておくことである。
あとは税務調査において事実認定されたときに、上記の各ポイントにおいて調査官を論破するだけの書類を準備してもらうほかない。
それが無理ならおとなしく雑所得として申告する方が賢明であろう。