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医療費控除(通院費):医療費控除における通院費の範囲について

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弊社の顧問先ではないが、ある納税者が医療費控除を失念していたとして、通院にかかった高速道路利用料、ガソリン代等を医療費控除額に追加計上した更正の請求を平成30年から令和2年分の申告につき行ったが、課税庁が更生事案に該当しないとして請求を却下した。

当該納税者は、それに対して処分の取り消しを求め国税不服審判所に提訴したが、同審判所が課税庁の処分を妥当とする判断を下した。

あらたに医療費控除額に追加した金額は、それぞれ約7万円、4万円、4万円であったことから、更生の請求による還付見込み税額は目を見張るような額になるとは思えない。よって、税務署も純粋に法解釈に則った判断をせざるをえなかったと思われる。

正直言って、確定申告時に入れておけば不問に付されていたかもしれない費用ではあるが、当該事案を題材に医療費控除の対象となる通院費について再確認しておきたい。

医療費控除については、所得税法第73条で控除限度額が規定され、医療費の具体的な細目については同法施行令第207条、同法基本通達73‐3に規定される。

よって、通院費については施行令と通達に規定があるのだが、施行令第207条③に「病院、診療所へ収容されるための人的役務の提供(一部略)」の対価とあり、基本通達73条‐3には「医師等による診療等を受けるための通院費」ともある。

審判所の判断においては、施行令に「人的役務の提供の対価」と明記されているからには、基本通達における「通院費」もその範囲で解釈すべきとし、通院に要する人的役務の提供の対価に限られるとした。

すなわち「診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価については、例えば病状から見て急を要する場合にタクシーを利用して入院した時のタクシー代などがこれに相当すると解され、そうすると病院等へ通院するためのバス等の運賃等も同号の解釈として定められている本件通達に言う通院費に含まれると解するのが相当である。」、そして「本件ガソリン代等はいずれも商品の購入の対価として支出されたもの、または設備もしくは施設等の利用の対価として支出されたものにすぎず、人的役務の提供の対価とは言えないものであるから、本件通達に言う通院費に該当しないと認められる。」と結論付けた。

公共の交通機関の利用料は医療費控除の対象になるが、マイカーでの通院費は控除の対象とはならないとの結論ではあるが、過疎地でのマイカー利用については致し方ない面もあり、人口減少により公共交通機関の減退が進む地方の実情を鑑みると、今後は法改正もあるかもしれない。

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