年金財政の将来が暗いと言われ久しい。その対策として、数年前から社会保険の適用範囲の拡大がされている。
弊社においても「従業員5名以上の士業事務所は社保強制加入」という2022年10月からの改正?により、従業員の手取り収入及び弊社の負担は激増している。
社会保険は収入(通勤手当も含む)に対して一律約15%が天引きされるため、年収400万円前後のサラリーマンからすれば、所得税よりも負担が多くなるのである。
社会保険料の重い負担から逃れるため、接待を伴う飲食業に従事する女性スタッフ(通称ホステス)に多く見られるのが、給与所得者ではなく個人事業主として勤務するお店と契約をしているケースである。
従業員からすると、事業所得者としてお店から支払われる収入から仕事に必要な洋服や化粧品、飲食代等を差し引いて確定申告ができ、また社会保険は国民年金、国民健康保険となり、給与所得とするよりも手取り収入が増す可能性が高い。
お店側からしても、社会保険の事業主負担が無くなり、インボイス制度が導入される以前は消費税を控除することができた。
よって、個人事業主扱いとすることは労使ともにメリットがあったともいえる。
ここからが主題なのだが、このような状態を国税当局が放置するわけがない。当コラムの2024.1.25号にも掲載しているが、給与所得者と事業所得者の区分については、裁判において以下の基準が明確にされている。
- 独立性要件
- 従属性要件
事業所得の定義として「自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得」としていて、自己の計算の基準に「帳簿をつけているか」、独立しているかの基準として「報酬の決定をしているか」「貸し倒れのリスクを負っているか」となっている。
仕事場所や仕事内容及び勤務時間について勤務先からの制約を受けているかどうか、勤務先の名刺を使っているか、等の勤務先への従属性が強ければ給与所得者としてみなされる。
最近では、インスタ等のSNSでフォロワーを何万人と獲得しているホステスもいるらしく、TVの出演等もあり、お店よりもそのホステスの名前が独り歩きしている場合においては、独立性、従属性要件に照らしても事業所得者としてよいと思われる。
ただ、現実にはそのようなホステスは稀で、ある税理士は「事業主ホステスは東京と大阪以外にはいない」とまで言っているくらいだ。
わたしの知る限り、ホステスの事業主扱いを給与扱いにされるリスクを理解しているオーナーママさんは皆無である。追加の消費税や源泉所得税の徴収不足等が3年も積もればかなりの高額になる。顧問をされている税理士の先生はリスクの説明を年に1度はしておいた方が後々のためにも賢明かと思われる。