税務コラム

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必要経費か否かの判断は税理士には難しい

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寒い。今日は1月24日。
今季最強の寒波が到来したらしく、神戸でも最高気温は4度を超えないそうだ。
世間は極寒の底にあるが、税理士業界は灼熱の繁忙期の最中である。

2月から3月の確定申告業務は世間でも認知されているが、実は1月も年末調整や法定調書の作成などでかなり忙しい。
さらに1月後半からはクライアントから徐々に確定申告の資料が届き始めるため、気忙しさを加速させる。
その資料というのが、シワだらけのレシートの山ということで(最近はエクセルにデータ入力をしていただくようになり、かなり改善はしているが)、確定申告の作業時間の大半は実はこのレシートの整理、つまり肉体労働となるのである。

なぜ、このようなことになるかといえば、納税者は「何が必要経費になるのかわからない」からなのであるが、今回は判例をもとに「必要経費に出来るか出来ないか」の基準を確認しておきたい。

ここでは、「弁護士交際費事件(東京高裁h24.9.19)」の判決要旨を題材に簡単にまとめさせていただく。
詳細を知りたい方はネット検索をお願いしたい。

事件の概要は、仙台のある弁護士が本業の傍ら、東北弁護士連合会や日本弁護士連合会といった政治活動に多く携わっていたため、会務にかかった支出を確定申告において弁護士業の必要経費として計上していたところ、税務調査で否認され裁判に至ったということである。
結果結論として示された必要経費か否かの基準は「業務の遂行上必要であること(必要性)」、そして「業務に関連した支出であること(関連性)」の2つが満たされていること、ということである。
そしてその判断は画一的なものではなく、「個別の諸事情を総合的に考慮して判断すること」とある。
当該弁護士事件での中で必要経費として認められた支出、認められなかった支出は下記の通りである。

●認められた支出
 ・弁護士会等の公式行事後に催される懇親会費
 ・他団体との協議会後に催される懇親会費
 ・弁護士会等の機関の会議後に催される懇親会費
 ・委員会を構成する委員に参加を呼び掛けて催される懇親会費

●認められなかった支出
 ・毎週行われる執行部会後に引き続き行われた懇親会費
 ・執行部メンバーを慰労する目的で行われたものであって、費用の額が課題である懇親会費
 ・懇親会後に開催される二次会にかかる支出

税理士として、クライアントから「何が経費になるのか教えてください」と言われれば、上記の基準を伝えるしかないだろう。
ただ、現実的には関連性や必要性に疑問符が付くような出費が必要経費として計上され、税務署から指摘を受けていないものも多くある。
ある国税OBの税理士から言われたのは「税務調査は交通事故みたいなものである」。
普段から気をつけていても、スピード違反や駐禁も含めて、捕まるときは捕まるし、捕まらないときは捕まらない。
これは運の問題であると言っていい。

税務調査も同様といえる。クライアントから「必要性と関連性のない支出を経費として計上し、税務署の指摘を受けずに済んだ友人がいる」と言われても、それはその人は運が良かっただけであり、あなたが同様のことをしても税務署から指摘を受けないとは保証できない、としか返答できない。

以上のことから、表題のとおり必要経費かどうかの判断は、当事者ではない税理士には極めて困難なのである。
税金は対価の無い支出である。

確定申告期は納税者一人ひとりの人格や倫理が問われる場でもある、というのは少々言い過ぎか。

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