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「押なつの廃止」に反対する

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来年(令和7年)1月より、紙ベースの申告書等を税務署窓口で提出した場合に押してもらえる受領印が廃止されることになった。

これは、国税庁の掲げる「税務行政のDX化」に沿ったもので、「あらゆる税務手続きを税務署に行かずに済ますことができる社会」への取り組みの一つだ。

基本的に、電子申告をしてほしいという当局サイドからのメッセージであるが、紙ベースの申告制度が廃止になるわけではない。

では、紙ベースで申告を続けた場合については、受領印の代わりになるものを何で代用したらいいのか。

税務署の受領印が押された申告書の控えというのは、金融機関への提出、住宅・自動車ローンの審査、奨学金の申請など、多様な場面で必要とされる。

その控えの代用物としてもらいたいと同庁が提示しているものが、「申告書等情報取得サービスから取得できるPDFファイル」と「納税証明書」である。

「申告書等情報取得サービス」とは、直近3年分の所得税の確定申告書、青色決算書及び収支内訳書について、PCスマホからマイナンバーカードとe-Taxソフトを使うことで、受付日付や受付番号が表示されたPDFファイルを無料取得できる制度とのこと。

印刷も可能である。

納税証明書は、今までと同様で税金の納付状況の確認を目的とした証明書で有料である。

これについて意見を言わせていただくと、まず前者であるが、そもそもマイナンバーカードとe-Taxソフトを使える人は電子申告もするだろう。

紙ベースでの申告をせざるを得ない人とその背景についての思慮に欠けると言わざるを得ない。

また、後者においては捺印された控えが有する「いつ提出したか、本当に税務署に提出した申告書等か」という情報を「いくら納税したか、未納税金はいくらか」ということを証明する納税証明書に置き換えようとすることが筋違いである。

さらに費用もかかる。

さらに言うなら、税務署に提出した紙ベースの申告書が、役所内で行方不明になった場合は、圧倒的に納税者が不利になるということなる。

無申告扱いされたら、加算税までかかってくる。

ベテラン税理士なら、税務署側で資料を紛失された経験がある者は少なくないはずだ。

政治家や高級官僚は現場を知らない。

紙提出の制度を続ける限りは納税者保護の一環として捺印制度も続けなければならない。

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