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インボイス制度:フリマアプリを通じて行った取引からみえる同制度の限界

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インボイス制度が始まって約半年が経過する。

弊社においては今のところ税務調査もなく、インボイスの有無が問題になったという事案はないが、オークション仲介業者から質問された事案が表題の件である。

メルカリなどのフリマアプリの業態は、アプリ事業者からモノを購入するわけではなく、出品者からモノを購入し、フリマアプリ業者に手数料が支払われる仕組みだ。

よって、事業者がフリマアプリから物品を仕入れ販売している場合には、出品者のインボイスナンバーを取得できなければ、購入者は当該仕入れについての仕入税額控除をすることができなくなる。

売上1億円以下の事業者に対する少額(税込1万円未満)の課税仕入については、帳簿記載のみで仕入税額控除の要件とされる、いわゆる少額特例の範疇であれば上記の例が問題になることはないが、自動車販売業などで、金額的に規模の大きくなる業種に関しては、消費税の額も桁違いになるため、非常に大きな影響を受けることになってしまう。

この対応に対して、週刊税務通信(№3794)では、アプリの機能で出品者と直接商品について質問ができるようになっている場合、そこでインボイスナンバーの有無の確認をしてほしいとのこと。

そして、インボイスナンバーが無い又は確認できなかった場合には仕入税額控除はあきらめてほしい旨の記載があった。

同誌の情報は国税庁のHPに次いで信用できるものである。

私見であるが、この問題はフリマアプリやオークションで仕入れをしていた業者に大きな影響を与えるように思える。

少なくとも仕入れ先を一般的な卸売業者に変更することは十分に考えられる。

それは、フリマに出品していた多くの小規模事業者に壊滅的な打撃を与えるかもしれない。

インボイス制度は、売上1千万円以下の免税業者に消費税を納税するよう仕向けるために設けられた制度である。

以前のコラムでも述べたが、ならば免税制度を廃止するか、免税点を引き下げればいいだけの話ではないのか。

インボイス制度導入のために、システムの変更や広報などでどれだけの税金を使っているのか。

そして「税制の中立性」という大原則から大きく逸脱する結果をももたらしている。

納税者に納税を促す立場にあるものとして、本当に申し訳ない気でいっぱいである。

政治が劣化しているのなら、せめて政府官僚くらいはしっかりしてもらいたい。

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