「メットライフ生命」「アクサ生命」など、最近は外資系保険会社も社会に認知されたようで、確定申告や年末調整時の生命保険控除の欄に多くの横文字生保会社名が見受けられるようになった。
そういった外資系保険会社は自社の生命保険外交員を「ライフプランナー」と称し、常にスーツとネクタイを着用させ、いかにも「できる人」感をプンプンと匂いたたせて保険販売を行っている。
弊社の顧客にもライフプランナーの方がおられるが、かなりの高額報酬である。ただ、高額報酬を獲得できるプランナーはかなり少数で、3年生存率は1%に満たないとも言われている。
この、ライフプランナーたちは、言わば保険の契約書にハンコを捺印させることが仕事であるため、直接的な必要経費はほとんど無い。保険契約者を探し出す(紹介をもらう)活動や移動、連絡に伴う経費が必要経費となるのみである。
よって、比較的多額の税金を支払うことになるわけであるが、契約当時に当人から「個人事業税はかからない」と伝えられた時はすぐに理解できなかった。所得税は堂々と事業所得として申告しているにもかかわらず、個人事業税はかからないという。理由を確認すると「地方税法72条の2」規定される第1種から3種までの事業に該当しないからだという。
保険外交員は、いまでは「ライフプランナー」と称され一定の社会的地位が認められる職業ではあるが、私が子供のころは「ニッセイのおばちゃん」に代表される未亡人が携わることの多い業種であったため、特別の政治的配慮でもされているのかなと思い、当時はやりすごした。
ただ、令和7年の3月4日に東京地裁で、このライフプランナーへの個人事業税をめぐる判決がでたというニュースがあった。東京では平成29年から保険外交員の事業所得に対して個人事業税が課されていたというのである。個人事業税は地方税であるため、地方自治体により取り扱いが異なるのではあるが、まさか東京都が課税に踏み切っていたとは知らなかった。課税の根拠は地方税法72条の2に規定する第1種事業の「代理業」に該当するから。
この裁判は個人事業税を課せられたライフプランナー19人の集団訴訟で、彼らの主張は保険外交員事業の「代理業」との一方的な都の認定は租税法律主義に反すること、そして自らは生保会社の「使用人」であり「代理業」としての事業を営んでいるわけではないこと。この2点をもって課税の取り消しを求めていた。
それに対して東京地裁は、代理業の解釈を商法第27条の「代理商」、そして所得税法上の事業所得の「事業」の概念から事業税の課税客体である旨を明示し、結果として東京都の課税処分を是とした。
詳細はホームページ等でご確認いただければと思うが、裁判所の判断は正しいと思う。保険外交員に事業税が課せられていないというのは、他のサービス業者との整合性が取れていないように感じていた。
ただし、原告が控訴するか否かはまだ判明していない。もし、このまま結審するか最高裁までいって原告敗訴ということになれば、生保外交員への事業税課税は全国に波及するであろう。