税務コラム

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「103万円の壁の高さはいくらが適正なのか」:基礎控除の意味と適正額を考える

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本日は令和6年12月20日。今年もあっという間の一年であったが、この一年の大きな出来事の一つに、先日の衆議院選挙での与党大敗が挙げられるのではないだろうか。今まで好き放題にこの国を牛耳ってきた官僚お抱えの自公政権が、次年度以降は野党の意見も取り入れながら政策を進めていかざるを得なくなったのである。

その第一弾が令和7年度税制改正大綱の取りまとめである。その中でも特に注目されているのが「103万円の壁」と言われている、パートタイマーや学生の労働時間の足かせとなっていた扶養控除や配偶者控除の適用上限を178万円にまで引き上げることができるのか、という点である。

ウクライナ戦争以来、小麦や原油の値段が上昇し続け、物価の高騰は目覚ましい。にもかかわらず労働者の給与は物価の上昇率に見合わないものになっているとされ、先の選挙はどの政党の政治家も「最低賃金1,500円」と念仏のように訴えていた。国民民主党以外(国民民主は「手取りを増やす!」)。

上記の103万円が据え置きのまま最低賃金が1,500円になれば、世帯主の扶養親族であり続けたい妻や子は当然のことながら労働時間を現状より短縮しなければならない。世間は労働者不足である。経済界は困る。よって、扶養控除の適用上限の引き上げ論が湧いて出てきたのである。

そもそも基礎控除とは何なのか。ある税法学者は「憲法で保障された生存権を所得税法上で表現したもの」と言っている。基礎控除の額の推移をみると下記のとおりである。因みに※はカッコ書き年度の大卒初任給である。そして、そのあとに当時のラーメン一杯の平均価格を載せている。
~1976 26万円
76~82 29万円 ※114,500円(1980) 200円(杯/ラーメン)
83   30万円
84~88 33万円
89~94 35万円 ※169,900円(1990) 437円
95~19 38万円 ※200,300円(2010) 594円
20~24 48万円 ※225,000円(2024) 900円

日本における給与の伸び率とラーメンの値段の伸び率の乖離には驚く。
昔は給料が安い以上に物価も安かったんですね。

ここで、基礎控除の引き上げベースを大卒初任給とするかラーメン一杯の平均価格とするかには議論があろうが、いずれにせよ基礎控除額の引き上げは急務であったと考えざるを得ない。

本日の朝刊には、自公政権の税制改正大綱には103万円を123万円に引き上げるとし、178万円を目標とすると明記されたとの記事が掲載されていた。

国民民主党は顔をつぶされた感が否めない。

今後野党がどう動くのか、来年の政局が見ものである。

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