最近は、創業による会社設立の相談を受けることが7割、残りの3割は事業の廃止に伴う廃業の相談である。開業して20年になるが、廃業の相談の頻度が高まっているとは思う。
会社の廃業は、具体的には「清算」という手続きをとることになるが、それにはまず「解散」の登記、解散確定申告、「清算結了」の登記、清算確定申告が必要となり、登録免許税と司法書士、税理士への手数料を合計すると結構な額になる。
私は、これを「会社の葬儀代」と言っているが、法人も自然人と同様に去り際をキレイにしようとすると資金が必要なのである。
ここに「キレイに」と書いたが、実は「キタナい」方法もある。自然人で例えると、死体を野ざらしにして土に返すイメージになろうか。要するに、お金がかからない。それが、「みなし解散」という方法である。
みなし解散とは、最後の登記から12年経過して全く異動登記がなされていない法人を対象とするもので、株式、合同会社だけでなく一般社団法人や一般財団法人をも含む(一般社団法人は5年)。会社法上取締役の任期は2年から10年とされ(一般社団法人等も含む)、長くても10年に一度は必ず変更登記が必要となる。それがなされていない、すなわち会社が活動しているのかどうか不明である会社が依然として登記上確認できる状態を放置すると商業登記制度の信用にかかわる、ということで年に一度登記官により該当法人が強制的にみなし解散させられる。
因みに令和5年度のみなし解散対象会社は27,887社、一般社団法人も1,787社であったとのこと。
ただ、活動しているのに役員変更登記を失念していたため12年間何の登記もせずにいたというケースもあるかもしれないため、毎年10月に官報公告がなされ、該当法人にその連絡がいくとのこと。もし、事業が継続されていたら、「事業を廃止していない」旨の届出を12月10日までに登記所に提出する必要がある。
税務の話をすると、申告義務が免除されるわけではないため”みなし”であっても解散確定申告が必要となる。上記の対象会社の内、解散確定申告をした法人は何社あるのだろうか。
いずれにせよこの制度、法律通りに解散、清算の登記をした人がバカをみるような気もしないわけでもない。