事業承継の問題が叫ばれて久しい。
中小企業庁によれば、経営者の平均年齢は約67歳、その約50%に後継者がいないとのこと。
弊社の顧問先にも、その類に入る会社があったが、先日他人承継が決まった。
取引先へのM&Aである。
何よりも、その会社の社員が安堵したのではないかと思うが、会社を取り巻く利害関係者は金融機関や仕入先、得意先など、社歴が長いほど多くなり、事業承継問題は当該企業一社の問題ではない。
ただ、事業承継は経営者が高齢になるほど難しくなる傾向にあるらしい。
特に経営者の年齢が70歳を超えると、M&Aの成約率は格段に下がるとのこと。
私見ではあるがその主な理由としては、高齢者特有の「思考の硬直化」という面があるのではないか。
私に限らず、加齢とともに変化を受け入れにくい脳になっていくように思える。
人は自分の経験値というフィルターを通して世の中を見ている。
当然のことながら加齢により経験値は増していくわけだが、経験値が思考を硬直化させ、未知数のことに対する免疫を衰えさせているように思えるのだ。
弊社の顧問先においては、承継後の統合問題が始まったばかりである。
前社長が自分の存在感を示すために横やりをいれてこないか、社歴の古い社員が新体制を受け入れてくれるのか、同業他社が同社の市場を侵してこないか、未知数のことだらけである。
特に創業者にとっては、手塩にかけて育て上げた会社が自分の手から離れていく感覚は受け入れ難いものかもしれない。
まして社歴が何年あろうと事業承継は初めてことである。
経営者が変化を許容しやすいうちに事業承継問題に手を付けていくことは大切なことである、と顧問先から見せつけられている。
私も今年で54歳。
後継者はいない。